項目
・骨延長術による骨再生
・軟骨再生
骨延長術による骨再生
種々の外傷や先天性疾患などに伴う骨の短縮に対し行われる骨延長術では、より安全に確実に骨を長くすることが可能である。本法では、延長する骨に皮膚の上から金属製ピンを挿入し、ピンの間で骨を一旦横切後、骨延長器で固定する(図1)。術後約1週より、1日1mmの速度で延長を開始し、予定延長量に達した時点で、骨延長器をロックし(図2) 、骨の成熟・硬化を経て、延長器をはずす(図3) 。
当科では、3cm以上の脚長差のある患者さん(図3)や最終身長が135cmに満たない患者さん(図4)などに対し本法を行っている。
また、生まれつき足趾が短い場合(先天性第4中足骨短縮症 図6)にも、指趾用骨延長器を装着(図7)し、骨延長が可能である(図8)。
軟骨再生
関節軟骨は、関節が痛みなくスムーズに動くために重要な役割をしているが、いったん傷つくと自然に元のように治ることはない。このため、軟骨が損傷された関節では、スムーズな運動ができなくなったり、痛んだりするだけでなく、時間ともに軟骨の損傷がひどくなる。損傷された軟骨を修復するために、色々な治療が行われてきたが、どの方法も完全なものではない。
骨の内部(骨髄)には骨や軟骨を作る細胞のもとになる細胞(間葉系細胞)があるが、最近、間葉系細胞が骨細胞や軟骨細胞になる過程を調節する色々な物質(タンパク)がわかってきた。そこで、これらのタンパクを使って骨髄の間葉系細胞を軟骨細胞へ変化させ、傷ついた関節軟骨を元のように治す研究が行われている。
当科でも、十数年前から動物実験を行ってきたが、その結果、FGF-2(線維芽細胞増殖因子)というタンパクが関節軟骨を作るのに重要な働きをしており、関節軟骨の損傷部にFGF-2を加えたフィブリン糊という薬を入れると元のように軟骨が作られることがわかった(図9)。
FGF-2はもともと人の体の中に存在しているタンパクで、色々な細胞を増殖させて傷を治す役割などをしており、すでに皮膚潰瘍などの患者様に対する新たな治療薬として使われている。
そこで当科では、関節軟骨が損傷した患者様に対する新たな治療法として、関節鏡を使って関節軟骨損傷部に骨髄まで穴をあけ、そこにFGF-2を加えたフィブリン糊を注入する「関節鏡視下FGF-2注入療法」を考案し実施している(図10)。
この方法は、骨髄の間葉系細胞を損傷部に誘導し、この間葉系細胞が軟骨細胞に変化して軟骨を作ることで損傷部が軟骨で修復されることを目的としている。