科長挨拶
整形外科は、上肢、下肢、骨盤、脊椎・脊髄など、体を支え動かす運動器の外傷(ケガ)や疾患(病気)を診断し治療する診療科です。
整形外科の患者様は、新生児から高齢者まで全ての年齢層にわたり、先天的な疾患、成長期にみられる疾患、交通事故や労働災害による外傷、スポーツによる外傷や故障、加齢に伴う関節や脊椎の疾患、骨や軟部組織の腫瘍、関節リウマチや骨髄炎などの炎症性疾患、あるいは骨粗鬆症などの代謝性疾患など、多種多様な外傷や疾患を対象としています。
このため、当科では安全で高度な医療を提供することを目標に、専門診療体制を整備し、それぞれの疾患ごとに専門医が診療に当たっています。
治療にあたっては、薬物治療、運動療法(リハビリテーション)、手術などの中から、それぞれの患者様に応じた最も適切な方法を選択し、また患者様の負担がより少ない関節鏡視下手術や顕微鏡視下手術などを利用して、早期に日常生活やスポーツへの復帰ができるような治療をこころがけています。また、骨・軟部悪性腫瘍や癌の骨転移の治療、側彎症に対する手術的治療、病的低身長や脚長不同症に対する骨延長術、種々の合併症を持つ患者様に対する手術などにも積極的に取り組んでいます。
また当科では、様々な運動器疾患の病態解明と新たな診断・治療法の開発をめざして研究を進めています。
関節の分野では、日本人の骨の形状により適合した人工股関節の開発と臨床応用、手術後になるべく良く曲がる膝を目標とした人工膝関節の生体内運動解析、安全かつ正確に関節鏡視下手術を行うための肩関節の解剖学的研究、さらに変形性関節症に対する新たな治療法の開発を目的とした関節破壊の分子メカニズムの解析などを行っています。
脊椎・脊髄の分野では、椎間板ヘルニアにおける脱出椎間板の自然吸収メカニズムの研究や椎間板再生医療に向けた椎間板髄核細胞のマーカー遺伝子に関する研究、椎間板変性症のゲノム研究などに取り組んでいます。
腫瘍の分野では、MRI拡散強調画像を応用した骨軟部腫瘍の質的診断と化学療法効果判定、軟部悪性腫瘍における縮小手術の可能性などについて研究を進めています。
さらに、きわめて治療が困難な関節軟骨損傷の治療に対しては、増殖分化シグナルによる軟骨再生制御機構の解明に取り組み、その研究成果に基づいて「関節軟骨損傷に対する関節鏡視下FGF-2注入療法」を考案し臨床応用を開始しています。
また、現在整形外科で現在用いられている様々な診断法や治療法の妥当性を検証し、最も安全で効果的な方法を確立するために、当教室の関連病院と連携した多施設での検証試験にも積極的に取り組んでいます。
熊本大学医学部附属病院 整形外科科長 水田 博志



